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ローランド(Roland)


ローランド株式会社(Roland Corporation)は1972年、エース電子工業を退社された梯さんと同じく退社された旧エース社員の方々が中心になって大阪市住吉区(1974年 に分区し住之江区となり現在に至る)に設立されました。それはエース電子本社からわずか2〜300メートルしか離れていない場所でした。エースでの失敗を 乗り越えて世界に通じる理想の楽器メーカーを一から作りたい想いから、新しい社名は当時楽器メーカーに『R』から始まる名前を見なかったことも踏まえて、 ヨーロッパの英雄の名前に多い『Roland(ローランド)』とカタカナにしたのだそうです。創業当初はACE TONEと似たようなリズムマシンやアンプなどの製造で資金難をしのぎましたが、ローランドの名を一躍有名にしたのは翌73年に発表された日本初のシンセ サイザーSH-1000です。単音アナログ方式でしたが楽器として明確な利用法を示したことは今から振り返ると楽器の歴史を変える程の出来事なのかもしれ ません。シンセサイザーで世界進出の勢いが付いたローランドは、エーストーンでも手掛けていたファズエフェクターBeeBaaやBeeGee、ギターアン プのJAZZ CHORUS(JC)シリーズ、ギターシンセサイザーGRなどギター向け機材でも強みを見せていました。70年代当時の音楽業界において海外における流行 の波は日本より2〜3年早かったんですが、ローランドは常に世界の波を見極めた商品展開を行っていました。ローランド製品は常に日本より先に海外でヒット する傾向にあり、その海外成功の結果、日本でのローランド人気は逆輸入という形で伝わり大きくなっていったそうです。

80年代以降は音楽業界におけるデジタル化の波を起こした企業の一つとして、世界で初めて開発したCPUシーケンサーMC-8は音符の 打ち込みによる楽曲制作を実現しました。そして世界中の違ったメーカーの電子楽器をケーブル1本で結び演奏の互換性を実現したMIDI規格策定にも大きく 関わりました。エフェクター分野においては、ロックやポップスで用いられる定番の音響効果のうちローランド/ボスが世界で初めて生み出した効果もいくつか あります。その中にはエレキギターで定番の効果であるオーバードライブやコーラスなどがあり、OverDrive OD-1から始まるBOSSコンパクトペダルシリーズは世界のロック演奏における必需品になりました。シンセサイザーから始まったこれらのローランド製品 を接続して奏でた音は、これを読んでいるみなさんも世界中のレコード作品の中で日常知らず知らずのうちに耳にしているはずです。

ローランドは商品を販売するにあたって、ミュージシャンと商品宣伝を目的とした製品使用に関するエンドース契約を結んだことが過去から 現在まで一度もありません。他の楽器メーカーではそのような契約を結ぶことが度々あるんですが、ローランド製品を使用しているミュージシャンの方々は全て 実費で購入して使用しているそうです。ミュージシャン自らが手に取って選んでもらうことでその製品は自然と価値が上がり、作り手側もユーザーの自発的購入 欲を意識することで確実な信頼感をつかみ取れるんだそうです。私を含めてユーザーが機材を選ぶ基準として、プロミュージシャンが実際に使用している製品を 名指しで選ぶことはよくありますしね。それと過去のローランド製品でよく耳にするのは、発売当初は人気がなく生産終了になった機種でも、数年後になって用 いるミュージシャンやDJが次々と現れたことでその後の取引相場が上がった機種が多いことです。ハウスやテクノではリズムマシーンの名機TR-909の音 が無いと曲が作れないって人を今も多く見かけますね。けれどもこの会社は一度製品の生産を打ち切った後は二度と再生産することはありません。技術面では後 ろを振り向かず、ユーザーに対しては常に新しい技術で挑戦する姿勢を示したいという意思なんだそうです。大阪住之江から育ったローランド関連企業は会社規 模の拡大に伴い80年代暮れから少しずつ移転を進め、93年までに創業地の住之江から完全撤退しました。現在本社は大阪市北区堂島浜にあります。製造工場 は浜松を始め世界中に多くの関連会社を傘下に抱え、東証一部に上場する程の大きな会社になりました。2000年にはMIDIの功績が大きく讃えられたこと で、創業者の梯さんは日本人で初めてアメリカの音楽の殿堂『Hollywood's Rockwalk』入りを果たしています。

会社の紹介は以上にしまして、個人的なローランドにまつわる話にも触れてみたいと思います。私の親が住之江に住み始めたのは75年頃ら しく、いつか団地のすぐ近くにあるローランドに取引で訪問したことがあったらしいんです。私が生まれる前後の当時は今の規模を想像できない位の小さな会社 だったようです。親の会社は当時ローランドが発行していた『ワウワウ(WahWah)』というフリーペーパーを受注していたそうで、その際創業者の梯さん にもお会いしたとのことです。現在自宅には当時の印刷物や資料が残っていないため詳しい内容は分かりません。ローランドが日本で初めて開発した『シンセサ イザー』という言葉が生まれて間もない頃だったので、当時はこの真新しい機械(?)は一応楽器らしいけど何の用途に使うのかさっぱり?と言った認識だった のかもしれません。私自身が幼い頃のローランドの記憶と言うと、家から出て少し歩けば『Roland』や『BOSS』の白い建物が数多く見かけられたこと ですね。ボスがローランドの子会社ってことも親から聞いてたので知ってましたが、音響機器というだけで具体的に何を作ってたのかはさっぱり知りませんでし た。昔からピアノを習ってた私でも楽器や音楽機材の音そのものに関心を持ったのはつい最近で、あの頃住之江で生産された機材の数多くが高値で取引されてい る現状は今でも意外にしか思えません。当時の機材の取扱説明書の記載住所を今見ても大体の場所特定ができますし、もし可能だったのなら小学生の頃から地元 企業の機材収集に手を出しとけば…なんて最近よく思い返しますね。


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